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「うつろう栞」 [小話]

お久しぶりな小話です。
短くしようと頑張って、この長さ。
精進せねば。
そして勝手にお子様お借りしました、事後承諾です、ごめんなさい。
いや、直接登場とかセリフとか、そういうのではないのです。
最後に存在を仄めかすと云いますか。
リスズさん宅のセスティ君。
本の貸し借りする間柄なお茶飲み友達。
セスティ君から借りた本に、陰之が返すとき栞をお礼として挟んだら素敵だよねって飼い主同士の会話から生まれた小話です。
陰之からセスティ君へ、飼い主からリスズさんへ、プレゼントふぉーゆー。










めがあった。

目の前にあるソメイヨシノが描かれた栞を手にとって陰之は思った。
友人が営むアンティークショップ「月猫屋」でのことである。
骨董品を扱うこの店は占いも行われているが、栞という商品を売り出していたことは今までない。
陰之の動きが止まったことに気づいた店主は栞の値段を言う。
それは普段陰之が買う書籍より安く、普通の栞としては高い額だった。
満開の桜の大木。
栞の柄として良いものなのか陰之に判断は出来なかったが、気に入ってしまった。
購入を決めた陰之に店主は一言「気に入ったのですね」と、栞に声を掛けた。

■*■*■*■*■

帰宅後は購入した栞に触れることなく一日が終わり、就寝となったところで友人から昨日借りた本を手にとる。
借り物であるが故に、あまり長い時間放っておくことは出来ない。
明日読もうと思い、ついでに買ってきた栞を挟んでおこうと栞を手にすると、
「……こんな柄でしたでしょうか?」
と、思わず陰之は呟いた。
綺麗に咲き誇るソメイヨシノ。
これは変わらない。
しかし、一つ一つの花が見てとれる、一本の枝が描かれていた。
大きなソメイヨシノと認識していたが、これでは全体の大きさなど分かりようがない。
しかし、美しさは変わらない。
陰之は特に気にしたふうもなく栞を挟んで未読の本を閉じた。

翌日、朝食までの時間に少し読んでおこうと本開く。
そこには勿論昨日挟んだ栞があるのだが、全く様子が違っていた。
蕾なのである。
うっすらと色付いた蕾は満開とは程遠い。
柄が明らかに違うが、読んだ場所の目印としての栞本来の機能は変わらない。
少し残念ではあるが陰之はそのまま読み始めた。
暫くして朝食をとるために栞を挟んで読書を中断する。
朝食後、読書を再開しようとすれば栞は小さな蕾から少し開花しているように思えた。
栞のことを店主に聞くことも出来るが、読書を進めることを優先した陰之。
中断する度に栞を挟み、最後に見てみればいつの間にか満開に咲き誇っていた。
「……読書状況を示している?わけではないですよね、流石に」
そう言って満足気に本を閉じると、返却を忘れないように目立つ場所へと置く。
そして手に持ったままの栞を見てみれば、先ほどまでの満開とは違う葉桜であり、陰之はふと思う。
いつも本を貸し借りしている青年のこと。
自分と同じように紅茶が好きで、読書が好き。
この本の本来の持ち主。
「彼に、……会いたいですか?」
陰之は返事が無いことを承知で栞に声を掛けて、そのまま栞を本に挟んだ。
表情を変える栞に友人は驚くだろうか、などと考えながら。
挟まれた栞は誰も見ていないところで蕾となった。


うつろう栞.png
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リスズ

こんにちわ♪
わわわっ、お話書いてくださったのですね!嬉しいです(*´□`*)
素敵なお話ありがとうございます!読ませて頂きました!
陰之の飼い主さんのお家は不思議な物があるので、
もしかしたら頂いたこの栞もただの栞じゃないのかな?とは思ってましたが、まるで生きているみたいですね。中に付喪神とか、精霊がいるのでしょうか…真相はわかりませんが…(*゚o゚)
セスティも使ってみてビックリすると思います。
そしてお礼に対して更にお礼の茶菓子を持って、陰之くんにその話をしに行って、そのまま、またお茶会でもするのかなと…妄想しちゃいました(*´ω`)
by リスズ (2016-10-30 16:53) 

陰之の飼い主

リスズさん

こんばんは♪
お話書いちゃいました!
不思議な物は特に集めているわけじゃないのに集まってしまう陰之宅です。
真相何でしょうねー^^ ふふふ←
吃驚しちゃいますか、可愛いなぁ(*´ω`*)
からのお茶会良いですねー。
また新しく仕入れた安全な本の話とかでもまた静かに語りながら盛り上がるんですよ。
危険は本はちゃんと収納してるので安心してください。
by 陰之の飼い主 (2016-10-30 21:59) 

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