SSブログ

「古城の宝」 [小話]

絶賛宝探しイベント開催中ですね!
ところで皆さん、1~2年前の宝探しは覚えていますか?
ストームパンク、なのですよ。
ニキシー管にテンションが上がり書きなぐり、長くなって途中で力尽きたのです。
がつがつ削って書き上げました、大遅刻にもほどがある←
他の参加者の描写とかルール説明とか削りまくって、まだまだ長かった。
そして飼い主は気付く。
陰之って弟子の頭撫でるの好きだな。





悪い天気が続いているある日の夕方、陰之は着替えやタオルなど鞄に入れて外泊の準備をしていた。
次に執筆する本の取材先が遠く、宿泊する必要があったからである。
足りないものは明日にでも買いに行こうと思い、準備を終えて書斎に入ると文鳥の確認をする。
たまにしか文が届かないとはいえ放っておいては文の意味がない。
文鳥の扉を開けてみると朝には無かった文が一通置かれてあった。
差出人を確認すると友人のアンティークショップ店主であり、陰之はすぐに開封する。
軽い挨拶のあと、月末までに暇な日があれば丸一日付き合ってほしいと書かれてあった。
陰之は文を手にしたまま考える。
月末までと期限が決まっているが、今既に月末である。
明日は空いているが、明後日には取材で今月末までに帰ってこれそうにない。
仕方がないと陰之は翌日店に行くことを手早く書いて文鳥に入れた。
そして本日中に買い出しを終えようと弟子を呼んだ。

■*■*■*■*■

「何故、お弟子サマがいらっしゃるのですか。
私は陰之に来てほしいと書いただけで……今更言っても仕方ないか」
陰之と弟子が店に入り、店主が弟子の顔を見た瞬間溜め息をついた。
陰之もまた個人的な事で弟子を連れるのは良くないと、一度は断ったのだが弟子は必ず行くと主張したので拒否する理由もなく共に来たのである。
「それで、今日僕は何をすれば良いのですか?」
問いかける陰之に店主は頷き一枚の新聞広告を見せる。
店主が陰之を呼んだ理由、それは古城イベントであった。
今は誰も住まない城で宝探しイベントを開催しており、店主は欲しい物が景品となっている為陰之に協力してほしいと云うことである。
景品の数は全部で七個。
その殆どはぬいぐるみであり、宝箱を見つけた全員に配られる大量生産品であった。
しかし一点だけ高級品があり、それは宝箱を見つけた先着一名のみプレゼントと書かれてある。
この新聞は昨日のもので、既に発見されているかもしれないが可能性があるのならば行ってみたいと店主は言った。

■*■*■*■*■

・開催時間は日の出から日の入りまで。
・時間制限なし。
・外部との連絡やカンニング防止の為、参加者全員の端末は受付で預かる。
・宝箱に入っている引換券を持って受付にて景品と交換。
・特別景品が終了しても通常景品は継続。
・城内マップの配布なし。
・建物の都合により車椅子の方は入れない場所あり。

■*■*■*■*■

「良かった、まだ目当てのニキシー管は発見されていないようですね」
「あぁ、良かった。
もし発見されていたら……まぁぬいぐるみだけでも有りがたく頂いて帰っただろう」
「……」
受け付けを終えた陰之たちは城内を進む。
どの個室も同じ造りで同じ蝋燭があり、簡単に迷子となってしまいそうだった。
「何故マップが無いんだろうな。
端末まで没収とは迷子は永遠に出られなくなるぞ」
「大丈夫ですよ、出口までの道はこうして各部屋の矢印が案内してくれます。
出られないことはないでしょう」
陰之は言いながら床の矢印を指すが店主は否定した。
「これだけで迷子がなくなるとは思えない」

疲れた、と溢す店主に陰之は休憩を提案する。
一階を全て見て回り、二階に行こうかという時である。
宝箱はまだ一つしか発見出来ていない。
まだ先は長く、急がなければニキシー管を見つけられないと言って店主は休憩を断った。
古城は安全性が確認されているだけで決して歩きやすいというわけではない。
脆い階段をのぼる時、陰之は店主に手をさしのべ店主もまた自然に手をとった。
階段をのぼりきると二人は手を離して、あとからのぼってきた弟子に店主は問う。
「どちらに行けば宝箱があると思う?」
「……」
店主を無言で睨みつつも弟子は思うところに向かって進むと、すぐに二つめの宝箱を発見する。
「××は勘が良いですね」
無駄に歩かずにすみましたと、陰之は弟子の頭を撫でながら問う。
「まだこの近くに宝箱はあると思いますか?」
近くにはないと思う、そう弟子が答えて次に進む。
階段のたびに手を繋ぐ陰之と店主に苛立ちながらも順調に宝箱を発見していく弟子はあらかじめ隠し場所を知っているかのようだった。

「あと二つ……ニキシー管が見つからない」
まさかわざと案内しないのではないかと店主が弟子に疑い目を向けると弟子は顔を反らした。
「あと見に行ってないのは地下室でしょうかね。
××はまだニキシー管があると思いますか?」
陰之は弟子の態度に苦笑しつつ質問すると、即答であると言い放つ弟子。
「では××の言葉を信じて探しましょう」
地下の入り口は何処だっただろうと言いながら進む陰之に、今度は弟子が陰之の手を取った。
「……そっちは、遠回り」

「そうでした、地下室は梯子だったので後回しにしていましたね」
あらためて地下室への入り口を見た陰之が言い、提案する。
「危ないので僕と××の二人で行きましょう。
亜瑠譜は少し待っていてください」
「あぁ、悪いな。付き合わせたうえに任せてしまって」
気にしていないと首を振る陰之は先におりる弟子に続いて梯子を掴んだ。
地下室といっても地上階と同じように蝋燭の光で照らされ、暗闇というわけではない。
左右ある扉の片方を開けると、宝箱はなく行き止まりで二人は首を傾げる。
「?」
「珍しく××も外すことがあるんするね」
「……違う、おかしい」
何がおかしいのだろうと陰之は部屋を見渡す。
置物があるだけで、何も変なところはない。
故に置物を調べてみると隠された道があった。
これでは見つからないはずだと陰之はまだ見ぬニキシー管宝箱に思いを馳せるが、その先で見つけたのはぬいぐるみ宝箱であった。
「もう一方の扉でしたか」
ぬいぐるみばかり全て見つけた陰之と弟子はすぐに引き返す。
そして残る道の先を進むとまた梯子があった。
「変ですね、他の地下室は全て蝋燭のあかりがあるのですが、この下は見えません。
燃え尽きる前に交換もされていましたし……」
イベントでは使われていない部屋なのだろうかと考える陰之に弟子はこの下に何かあると言った。
「では僕が行きましょう」
光となる端末は受付に預け、マッチやライターも無い二人は暗闇を進むしかない。
「大丈夫です、暗いところは任せてください」
自信たっぷりに言う陰之に弟子は渋々頷く。
本当ならば一緒に行きたいところだが、こう何も見えない暗闇であると逆に迷惑となる可能性が高かった為である。
「あ、勿論、上からの手助けは必要ありませんからね」
弟子に釘を刺す陰之。
弟子を思ってのことだが気遣われた本人は詰まらなさそうな顔であった。
闇。
己の姿さえ確認出来ない程の暗闇で、陰之は迷うことなく梯子に足を乗せておりていく。
暫くすると冷えた土が剥き出しの最下層へとたどり着いた。
陰之はあたりをぐるりと視渡す。
多くの小部屋とは違い火の間など大きめの部屋と同じくらいの広さがある。
壁は同じようにレンガで出来ており、他の部屋よりも大きく崩れて今にも倒壊しそうだ。
長居は無用だと陰之は既に崩れて散らばる部屋の隅を視る。
暗闇でも躓くこと無く近付くと何個かのレンガをどけて宝箱を取り出した。
「やっと見つけました」

■*■*■*■*■

帰りの車にて、念願の景品を手に満足気な店主。
「今日はありがとう、助かった」
「また何かあったら気軽に言ってくださいね」
礼を言う友人に陰之も頷いて微笑むが、隣で運転する弟子は詰まらなさそうだった。
「××もお疲れ様」
陰之は手に持っていたぬいぐるみを弟子の頬に軽く押しつけた。

ニキシー管.png
nice!(13)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:LivlyIsland

nice! 13

コメント 2

リスズ

ニキシー管、ありましたね!
あの時も頑張って宝箱探しました~。
お城の宝探しでは同じような部屋ばかりで、部屋番号見つつ移動してもいつも迷子になってしまいます。お弟子さん凄いです(*´ω`)
by リスズ (2016-11-28 11:56) 

陰之の飼い主

リスズさん

こんばんは!
ありましたのですよ!
あの時の勢いは何処にいったのやら。
当時も今もネタバレで巡っています。
とても今更ですが、大好きすぎて小話更新しました。
随分前に場内マップ作ったんですけどねー。
データ何処へいったか、行方不明なのでもう迷子です(笑)
弟子の勘が欲しい。
飼い主を案内して!
by 陰之の飼い主 (2016-11-29 21:58) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

今月の無料島宝探しイベント2016 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。